この記事では、『続日本紀』出典の蓄銭叙位令の本文と現代語訳を簡単にわかりやすく解説します。
定期試験、大学入試、歴史能力検定、教養としての日本史学習にぜひご活用ください!
蓄銭叙位令とは
蓄銭叙位令とは、和同開珎がなかなか流通しないため政府が出した詔です。711年に定められました。
蓄銭叙位令は年号も重要ですよ。「お金がないー!蓄銭叙位令」と覚えましょう。
蓄銭叙位令が出されたのは奈良時代の元明天皇の時代です。このときの権力者は藤原不比等でした。
当時はまだ貨幣の使用という習慣が根付いておらず、稲や布を貨幣の代わりとして用いていたため、和同開珎はほとんど使われていませんでした。
蓄銭叙位令の背景を確認したところで、『続日本紀』の蓄銭叙位令とその現代語訳を確認していきましょう!
蓄銭叙位令の史料と現代語訳-出典:『続日本紀』
まず本文全体とその現代語訳を確認した後に、一行、一行解説していきます。
和銅四年十月、詔して曰く、「夫れ銭の用なるは、財を通じて有無を貿易する所以なり。当今、百姓、尚習俗に迷ひて未だ其の理を解せず。僅に売買すと雖も、猶ほ銭を蓄ふる者無し。其多少に随ひて節級して位を授けん。……」
引用:続日本紀
【現代語訳】711年、天皇が詔を下しておっしゃることには、「そもそも銭というものの役割は品物を交換する手段である。しかし多くの人々は古い習慣に従ったままで、まだその意味を理解していない。銭を売買に使う者もいるが、なおいまだこれを蓄えるものはいない。そこで蓄銭の度合いに応じて等級を定めて位を与えることにする。」
蓄銭叙位令は『続日本紀』の出典です。
ここから、一行一行丁寧に読み解いていきましょう。
とは西暦711年のことです。蓄銭叙位令が出された年ですね。覚え方は「お金がないー!蓄銭叙位令」でした。
続いて、
【現代語訳】そもそも銭というものの役割は品物を交換する手段である。
の部分は簡単ですね。
次に、
【現代語訳】しかし多くの人々は古い習慣に従ったままで、まだその意味を理解していない。
とありますが、「当今」というのは「今現在」のことです。そして、この文の「百姓」は「農民」ではなく、「一般の人々」という意味です。
またここでいう「古い習慣」とは、稲や布をお金の代わりに使っていた習慣のことですね。
【現代語訳】銭を売買に使う者もいるが、なおいまだこれを蓄えるものはいない。そこで蓄銭の度合いに応じて等級を定めて位を与えることにする。
一部お金を売買に使う人もいるものの、貯金する人はいないので、貯金額に応じて等級(節級)を定めて位階(位)を与えるということです。
しかし、この蓄銭叙位令は失敗に終わります。
お金を使わせるために制定したのに、位階欲しさに皆がお金を貯め込むばかりで銭貨は流通しなかったからです。
蓄銭叙位令は、当初の狙いから全く外れてしまったんですね……
蓄銭叙位令に関する一問一答!
ここからは一問一答で知識を定着させていきましょう。一問一答を4題用意したので、腕試しにぜひご活用ください。
※それぞれの問題をタップ(クリック)すると、解答解説が表示されます。
【問題1】貨幣の流通促進のために出された法令とは何か?
【解答】正解は蓄銭叙位令です。人々がお金を使う習慣を定着させるために出された蓄銭叙位令でしたが、結果的には失敗に終わってしまいます。
【問題2】蓄銭叙位令は( )年に出された。[関西学院大]
【解答】正解は711年です。蓄銭叙位令は年号も問われることがあるので、しっかり覚えておきましょう。「お金がないー!蓄銭叙位令」でしたね。
【問題3】蓄銭叙位令が出されたときの天皇は( ① )であり、その下で権力を握り政治を行っていたのは( ② )である。
【解答】正解は①元明天皇、②藤原不比等です。藤原不比等は、中臣鎌足(藤原鎌足)の子供ですよ。
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