この記事では「立憲的意味の憲法」について解説します。そのためにまずは、憲法の分類として「形式的意味の憲法」から解説を始めます。
立憲的意味の憲法と憲法の分類
憲法は大きく分けると2つに分類することができます。
- 形式的意味の憲法
- 実質的意味の憲法
形式的意味の憲法
形式的意味の憲法とは、「憲法」という名前で呼ばれる、文章で書かれた(成文の)法典のことです。「憲法」という名前が付いていれば、内容はなんだっていいんです。例えば日本国憲法も形式的意味の憲法の一種です。「憲法」という名前が付いているからです。
実質的意味の憲法
実質的意味の憲法は、法の「内容」に着目した分類概念です。成文か不文かは関係ありません。重要なのは内容です。
実質的意味の憲法はさらに2つに分類することができます。
- 固有の意味の憲法
- 立憲的意味の憲法
固有の意味の憲法
固有の意味の憲法とは、国家の根本的な秩序を定めた法です。この意味の憲法は「いかなる時代のいかなる国家」にも存在します。
立憲的意味の憲法
立憲的意味の憲法は、近代的意味の憲法とも呼ばれ、立憲主義の思想に基づく憲法です。立憲主義とは簡単に言えば国家権力の濫用を防止し国民の権利自由を守ろうという考え方のことです。
立憲的意味の憲法の本質は1789年のフランス人権宣言に凝縮されています。
権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。
https://ch-gender.jp/wp/?page_id=385
さて、立憲的意味の憲法の目的は個人主義、すなわち個人の尊重の達成です。個人の尊重という究極の目的を具体化したものが人権です。
そして歴史的には国家権力こそが個人の尊重や人権保障の最大の敵です(歴史的にはずーっと国家の利益のために個人が犠牲になってきました)。
個人の尊重の最大の脅威である「国家権力」を制限し、国民の権利自由を守るために「議会制」/「権力分立」/「人権保障」の仕組みを定めた法内容が、立憲的意味の憲法なのです。
つまり立憲的意味の憲法とは国民の権利義務を守り抜くための盾であり、国家権力に義務を課し、国家権力の暴走を防ぐような内容を持った憲法と言い表すことができます。
ちなみに立憲的意味の憲法の規制対象は国民ではなく「国家」です。このような性質を対国家規範といいます。
立憲的意味の憲法の特色:思想史
その昔は、国王が権力を独占していました。しかし国王でさえも従うべき法が登場します。これを根本法といいます。この根本法の概念にロックやルソーの唱えた自然権思想が加わり、近代立憲主義へと発展していったのです。
自然権思想とは「人間は生まれながらにして自由かつ平等であり生来の権利(自然権)を有する」という考え方です。
さらに思想史的には社会契約説も重要になってきます。社会契約説とは「自然権をより確実なものにするために社会契約を結び政府に権力の行使を委任する」という思想です。
立憲的意味の憲法は「成文法」でかつ「硬性憲法」
立憲的意味の憲法は、思想的には社会契約を具体化したものなので文章の形(成文法)にするのが望ましいと考えられています。
また立憲的意味の憲法は硬性憲法であるべきです。硬性憲法の「硬性」とは、「通常の法律よりも改正により多くのハードルを設けたもの」という意味です。
立法権は憲法によって生み出された権利ですから、この立法権によって根本法たる憲法を改正できるようにすべきではないと考えられています。
憲法に関する一問一答 3題
ここまで学んだ内容を、一問一答で確認していきましょう。
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【問題1】憲法とはどの国家も保有する( )である。
【問題2】その内容に関わらず「憲法」という名称をもつ成分の法典を( )の憲法という。
【問題3】形式とは無関係に、内容面において、国家の基本秩序を構成している法を( )の憲法という。
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